12月2日(金)第1回米山ゼミ

第1回米山ゼミ

「パンデュースが考える食との関わり方」
講師/米山雅彦氏(パンデュース)


米山さんは、大学時代トライアスロンに熱中し、「自転車に乗る時間を確保するために」と、朝早く始まって早く終わる仕事=パン職人の道を選んだ。大学卒業後「カスカード」に3年半勤めた後、神戸「コム・シノワ」へ。西川功晃氏に師事してパン職人としての経験を重ね、2001年からは同店のスーシェフとなる。またこの頃、ベルギー、イタリア、フランス、チェコ、ドイツ、オランダ、ルクセンブルグなど、ヨーロッパの各国をまわり、さらにパンについての見聞を広めていった。
独立したのは2004年。「日常の食卓を支えるパンを作っていきたい」という思いから、クッキングスタジオ「シェリブロ」併設のブランジェリー「PAINDUCE(パンデュース)」のシェフに就任。さらに2008年には「add:PAINDUCE」を立ち上げた。2店舗ともに、パン通をうならせる繁盛店となっている。


食ゼミには、正解も間違えもない

第1回目となる「食ゼミ」を担当させていただくことになりました米山です。私の店は大阪にありますが、生まれも育ちも神戸ですし、現在も神戸在住です。だから、自分が住んでいる街に対して何かできることであれば協力したいなぁと思って、ゼミに初挑戦することになりました。
ここでパンデュースの宣伝をするつもりはないんですが、「パンデュース=米山」ってところもありますし、パンデュースのフィルターを通してお話しする部分も出てくると思います。“岐路”なんて言い方をすると何やら危ない感じがしますが(笑)、パンデュースを始めて8年目に入って、いろいろと方向転換というかチャレンジしていく中で、農家さんを始めとする普段からお付き合いいただいている方々をゲスト講師としてお招きし、「What’s PAINDUCE(パンデュースとは何か)」を考えながら、皆さんと一緒に勉強していきたいと思っています。
またKIITO事務局としては、来秋から実際に活動を始めた時に、「食の拠点」としても機能し、受講生の皆さんの中からも何らかの形で携わる方が出たらいいなという考えもあるようです。「食を神戸から発信する」ということに、正解も間違えもないと思うので、興味があったらどんどん関わっていってもらって、どんどん前に進んでいってもらえたらなぁと思います。
僕の紹介はこのくらいにして、今回はゼミというスタイルですので、皆さんからも、お名前と参加した意図やご自分と食との関わりなど、簡単に自己紹介していただけますか。


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デザイン事務所勤務、公務員、調理師、事務職、教育関係者、カフェ勤務、主婦、牧場勤務、高校生etc.インターネットなどから個々にゼミ受講を申し込んだため、この瞬間までそれぞれのプロフィールを全く知らずにいた参加者たち。短い自己紹介を通じてお互いの仕事に興味を持ったり、「食」に対する関心の高さには相通じるものを感じたりしたのか、緊張していたゼミの空気が少しずつ和んでいった。
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「自己紹介を聞いたがために、ちょっとハードルが上がってしまった」と後悔しています(笑)。
食に対する関わり方は皆さんそれぞれですが、お店をつくるということを考えている人も、単純に食を楽しみたいという人も、体に入れるものと健康との関係みたいなことを考えている人も・・・すべての人にすべての答えがあるわけではないでしょうし、答えがあることもないこともいろいろ出てくると思います。また、私自身もさっきお話ししたとおり、「What’s PAINDUCE(パンデュースとは何か)」=パンデュースというのはどういうフィルターで、消費者の方にパンを届け、どういう意味があって店をやっているのか? を考えている時期にさしかかっておりますが、答えは明確には出てこないような感じもしますし、ある程度の方向性を生み出し、そっちに進むだろうなっていうのも考えています。元々は、単純にパン職人として、自分が出来るものを100%出してきただけですけどね。かっこいい言い方をすると。


その辺にあるものを、そのまま出しても無意味

32歳の時にパンデュースをスタートさせて、昨日でちょうど丸7年、今日から8年目に入りました。職人としては10年ぐらいしか修業していませんが、神戸のレストラン「コム・シノワ」のブランジェリー部門では、ある程度の期間“スーシェフ”という2番手のポジションでいろいろな経験をさせてもらいました。オーナーシェフのように一般の人にまで知られる存在ではなかったものの、関西の(パン・飲食)業界内では、顔と名前ぐらいは覚えていただけるようになり、独立するっていうときには、「お前がこけたら関西がこけるで」と、先輩方からプレッシャーを受けたのをよく覚えています。
とりあえず、その時の自分にできることを全力でやっただけで、そんなに深い意味を持って、店をやったわけでもありません。ただ、「どっかの店の真似事をするのであれば、店をやらない方がいいのかな」という思いは元々あったし、「思うような店がないなら、自分でやろう」というのが基本的に正しい考えなのではないかと思ってスタートさせました。
あえて、店名にブランジェリーとかベーカリーをつけず、「パンデュース」っていう名前にしたのは、パンデュースという“スタイル”が提供できたらなぁと考えたからです。この店のスタイルが、何か社会にとって必要なものになったらなぁ、と。
野菜を使った商品が多いのは、パン屋という看板を掲げていないのだから、野菜を売ってもいいなぁと思っていたことに加え、「コム・シノワ」で修行したことの反動があるかもしれません。西川シェフは、デニッシュ生地の上にフルーツをいろいろ盛って、お菓子屋さんとパン屋の間みたいな商品を打ち出した先駆者みたいな方なんですが、私が店をやる頃には、もうどこのパン屋さんでもそのようなことはやっていた。ただ、「コム・シノワ」では果物を店でシロップに付け込んで表現したものを、どこにでもある缶詰のフルーツを載せている・・・・・・それが悪いとか良いとかではないですが、わざわざうちの店に来てくれた人に対して、その辺にあるものをそのまま出しても意味がないよなぁという気持ちが湧いてきたんです。

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答えにくいことを承知で、「一番美味しいと思うパンは?」と問うと、「コム・シノワ」のポテトパンの名前を挙げた米山さん。「パン作り職人として衝撃的な出合い、考え方が変わった軸となっているパン」だと言う。ジャガイモと水と粉とイーストを混ぜるだけというシンプルな製法だが、アンダーミキシングのギリギリのところで、モチモチの食感に仕上げていくのが特徴。また、「パンは生鮮食料品」ゆえ、材料や作り方がシンプルであればあるほど、出来栄えを均一に保つのが難しくなる。修業時代、定番のバゲットがとびきり美味しく焼きあがった日があり、スタッフたちと試食したその味は、いまだに記憶に残っているというエピソードも披露してくれた。
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野菜のパンを作り始めた時期は、はっきり覚えていないんですよ。野菜の下処理が大変なので、中(厨房)に僕一人、外(販売)にスタッフ一人の2人だけで回している小さな店でやるのはキツイだろうと思ったし、野菜は四季とともにつくられるのが本当なのに、人参も大根も1年通してあるけれど、それでいいのか? といった疑問もありました。うちで野菜を使うからには、どこかで“切り口”をつくりたいと思っていました。
別に深い野菜に対して知識があるわけではなかったですけど、単純に野菜が好きで、野菜に興味があったから、ある日「野菜をいっぱい入ったパンをつくっちゃえ!」というようなノリで、「コム・シノワ」時代にお付き合いしていた、広島の山本ファミリー農園に電話しました。「今、何が採れますか」と聞いたら、「ゴボウがいけるよ」とのお返事。労働時間が長くなる、しんどくなるのはわかっていたんですけど、エイヤーという気持ちで、「送ってください」と言いました。今でも使っているんですが、太いゴボウで、ほとんどアクが無くて甘いんです。取引をしようと思うと、1本2本ではなくケース単位になりますから、どうせなら一気にとって送料コストを抑えようと、思い切ってゴボウばっかり取りました。山のようなゴボウを下処理やなんやテストしていくうちに、一気にごぼうの商品が広がったのです。やりだしたら止まらなくなって、ずーっと繰り返しやっているうちに、気づいたら野菜がいっぱいの店になっていました。
今回のゼミに来ていただく講師の皆さんは、こうした出会いの中でつながった方々です――ご夫婦で有機栽培をされている宮崎さん、たぶん今日本で一番注目されている一人、カセントの福本シェフ、県や国を相手に食の話をしておられる弓削牧場の弓削さん、原種の豚の保護活動などもされているハム屋の楠田さん、日本で唯一無殺菌牛乳を提供している長谷川さん――野菜に限ってですけれど、「こうやろう!」と決めてまっすぐやっていると、何か紹介してもらえたり、出会いがあったりして、さらに、その出会いがつながっていったりするものです。


国産原料を通じて食文化を考える

 パン屋としてのパンデュースには、大きなテーマのひとつとして「国産物を使う」という流れがあります。実は、ここ2週間くらいで外国産小麦を仕入れることを決めたばかりですし、決して外国の物を否定するつもりはありませんが、ひとつは単純に(国産には)おいしいと思うものが多いということと、個人的に(TPPの成り行きで変わるかもしれませんが)国内の自給率は上げるべきだと考えていること、そして、もともとパン文化というものは、その土地の気候風土に合わせて発達した文化だと思うことが理由です。例えば、ドイツにライ麦パンが発達したのは美味しいからというよりも、小麦粉が育ちにくい風土の影響です。
僕は自分の店にバケットとかを並べて、「ヨーロッパの文化を無理やりこっちに入れよう」なんてつもりはありませんし、フランスに寄る気もドイツにも寄る気もありません。たしかに、ヨーロッパに憧れて職人が修業に行ったり、現地のパンを持って帰ったりしているけれど、本当にパリッと焼けたバケットが夜の食卓に並ぶ家ってまだまだ少ないと思います。去年のクリスマスには、一日に200~300本のバケットを焼きましたが、ほとんどはレストランに使っていただくもので、一般の方が買っていかれたのは数十本。それでもすごいと思うんですよ。だから、バゲットに限定せず、クープが入っていない柔らかいものを置いてみたり、同じ生地で調整が浅いものを置いてみたりとかといったいろんなことにチャレンジしています。できるだけ国産の小麦粉でパンを焼いて、日本のパンとの関わり方と言うのは何か、もっと発展できるんじゃないかを考えていきたいんです。日本のパン文化をつくっていこうと思っています。
ただ、これは純粋に考え方の違いの問題です。今回のゼミにゲスト講師として来ていただく楠田さんはドイツの食文化を提供したいと考えている方ですし、僕が仲よくしているパン職人の中にフランスの小麦粉を引っ張ってフランスのものに近づけようという職人さんもいるし、ビオ(完全に有機)の小麦でパンを作るとこだわっている人もいます。決して、良い悪いじゃないと思っています。
実はこのところの気候変動で、北海道に梅雨があるなど、天候不順で3年くらい不作が続いています。その上に農産物の価格は、毎年水準が変わったり制度が変わったりしているのですけれど、ここ2年くらいの国産小麦は「品質の比べて割高」になっていて敬遠されがちです。かといってそれを使う人が減ると、それこそ無くなってしまうと思います。
誤解されやすいですが、“品質の良し悪し”と“美味しさ”は別です。
品質を決めるのは麦の蛋白の部分だったり繋がりの部分だったりします。だから、うちはずっと「品質が悪くて高いけれど、美味しい」国産のライ麦を使っていたんですが、さきほどのような事情から手に入らなくなり、次ができるまでの“つなぎ”で外国産のライ麦を使ったことがありました。
最近話題のTPP。日本の経済的なことを考えると参加したほうが良いのかもしれませんが、パン屋として、小麦粉に関してだけ意見を言っていいのなら、「下手したら本当に絶滅する可能性がある」と思っています。安い外国産小麦が入ってきて、国内の小麦との価格の差が大きくなれば、国産小麦を買う人も売る人も減るでしょう。そのあたりも踏まえ、こだわる部分と、経営者として「新しいプロジェクトを動かして店を大きくしていこう」という思いや「供給量を安定して仕入れる」といった必要性とのバランスを考えて、外国産を一部に入れるようにしました。結構な勇気を持って決めました。たとえばリッチなバターとか砂糖で食べるようなもので、それほど小麦の味を必要としないパンならば、テスト形式で外国産を入れて作ったりしています。
製粉会社もいろいろと努力しているようです。今、北海道産小麦粉をお願いしている会社は、これまで国産小麦一本でやってきたにもかかわらず、TPPの流れを受けて、外国産小麦粉の試作をしていると聞きました。ニースの小麦を引っ張ってきて、国産小麦と同じような味が出るやり方を研究してやろうとしています。


最終的な選択を左右する“信頼関係”

一方で、やはり「国産小麦を守りたい」という想いはあります。“守る”なんて言うと、ちょっとおこがましいですけど、コメ農家さんに比べて、ビジネスを続けるのが難しい環境にあると思うので。だから僕はゴパン(コメ用の製パン機)を買っていないです。国としては、米の消費を増やそうと、製粉会社などに補助金を出して米粉を使う製パン機を入れています。となると、製粉会社はいまのうちに安く機械を入れて、その販路を自分たちでつくろうとして、パン屋に働きかけているのでしょう。でも、国産小麦を使うパン屋さんとして、僕は小麦農家さんを守るべきという考え方をしています。
また、米粉が悪いわけではないのですが、最終的にグルテン(小麦たんぱく)を添加するなら、アレルギー体質の子どもには食べられませんし、広告の仕方が間違っているとメーカーにも話しました。もし、グルテンを添加しない米粉パンができれば、それは意味があることだと思いますけれど。
現在は、北海道産の小麦粉ほか、九州でつくられている有機無農薬の「ミナミノカオリ」を使わせてもらっています。生産者は熊本の農家さんですが、有機肥料も使わずに、自然農法でそのまま自然で作っているのに、生き生きして美味しいものが採れます。おそらく、阿蘇のふもとに畑があるので、きっとミネラル分の多い土壌なんでしょうね。


熊本県菊池市の東博己さんが栽培する「ミナミノカオリ」。価格は一般的なライ麦の約3倍と高いが、「お客さんにとっても、ちゃんと価値があるものを提供するのがこちらの仕事」と米山さんは話す。


国内の製粉会社のほとんどが、ドイツ製の大きな製粉機を使っているが、小さな生産者は自宅の倉庫に小さなローラー式の製粉機を置き、挽いた粉のエイジングも目の届く場所で行うケースが珍しくない。

でも「無農薬だからいい」と言っているわけではありません。別に否定もしませんが、自然食品のお店でパサパサの天然酵母パンとか売っているのを見ても、僕は何とも思わない。やっぱり美味しくなかったら意味がないと思うので、「ミナミノカオリ」のように、美味しくて意味があるものなら、高くても買い続けようと思います。それを、ちゃんとビジネスにする――消費者の人へ納得する値段で売れるような物をつくろう――と努力しようとしています。
最終的には、“個人の繋がりの中の信用度”の問題かなぁ。僕は農業の専門家じゃないので、畑にいって土を触って「良い土だな! よし、ここの野菜を取ろうか」なんてことは正直わからないです。でも、作った人としゃべっているうちに、「この人の野菜なら信用して使おう」と決めています。
ある若いトマト農家さんは、「風邪をひいたら、人間も抗生物質を飲むでしょ? この野菜もしんどくなってきたら、ちょっとくらいはそういう薬をかけてあげると、元気になるからそれでエエねん」と話していました。それを聞いて、本当においしい野菜をつくろうと思っているなと感じたら、その一回の農薬使用を良いとか悪いとか言うんじゃなくて、その人を信用して、美味しければ使おうと思います。
今後は、(2011年3月の東日本大震災に伴う)放射能汚染の問題もあるだろうし、消費者の皆さんも「自分の口に入れるものは自分で責任を持って決める」時代になってくると思います。農家さんから直接買うわけじゃなくても、例えば、野菜は○○スーパーを信用して買おうとか決めて、それを自分で受け入れるしかないような気がします。
うちの店は、パンを褒めていただくこともありますが、「野菜美味しいねって」って言っていただけることが多いんです。それは、パンデュースが使っている野菜を信用してもらっている、っていう感覚でしかないような気がしています。

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食べ物に好き嫌いがない米山さんは、だからこそ「自分の味覚や嗅覚には自信がない」と言い、試作品の評価をセンスのいいスタッフに委ねている。唯一、“食感”に関する好みがハッキリしている点がパン屋に向いているかもしれないと自己分析。味覚の経験値を上げるために食べ歩きもするが、同業にはほとんど興味を示さない。
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もしかしたら、第5回の講義で楠田さんが話すかもしれませんが、肉の問題も同じですよね。「A5」とかってランクがあったりしますけど、あれは“さし(脂肪)”の問題であって、実際どういう薬でどういう肥料をやっているか、といったプロセスはランクを決める要素に入ってこない。基準値がないんです。「A5」ランクの牛肉はもちろん高くて、美味しいのかもしれませんが、たとえば抗生物質などがガンガン入れられるような酷い育てられ方をしていたとしてもわからないわけです。かたや、「A5」ランクでもないし、ブランド牛でもないけれど、生後3ヶ月は放牧して、牧草で食べてスクスク育った牛の肉もあります。一般の基準としては、「A5」ランクの肉より安く売られているでしょうが、消費者は自分でチョイスするしかありません。良い悪いではなくて、やっぱり「A5」ランクの肉が美味しいのなら、それを買って食べればいいでしょうし、さしが少なくて柔らかは「A5」ランクの肉に劣るけれど、薬を打たれていない肉の方が良いと思えば、それを自分でチョイスすればいい。消費者が一歩前へ出て、気になるところは勉強して、そのうえで信用したものを自分の中で取り入れていくということをしないといけないと思います。
実はつい先日、生まれて初めて「すき家」に入りました。「日本の外食企業で売上げトップになった」というニュースを見たり、同業の「吉野家」社長の本を読んで共感できる部分があったりしたので、見てみたいと思って。よくシステムもわからないまま、とりあえず牛丼を注文。人がいっぱいで何だか早く食べないといけないような、薄利多売なので回転させないといけないだろうなとか、僕の中でいろいろな意味を持って食べました。結局、経営者としても、消費者としても、「何を基準にこだわっているのか」ということを自分の中でわかって、食べ物と付き合わなければいけないのではないかと思っています。

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大量生産のパンは、「食の安全」という観点から見てどうなのか? 米山さんは「全部がそうなのかというと誤解なのですが・・・」と前置きしたうえで、大手パンメーカーの製品の一部にヨーロッパでは禁止されている添加物が入っているという事実や、製造過程で添加されていても、焼き上がりの数値が0なら使っていいという前提で基準値が決められていることなどを指摘した。また、天然酵母を使用せずにインスタントドライイーストやセミドライイーストを使う場合はどうか、イーストを培養するために添加するビタミンCはかまわないのか・・・挙げればキリがないが、そういうことを消費者もわかったうえで食べるべきだと提案した。
一方で、リテイルベーカリーの経営者として、大手と同じやり方をしても経営は成り立たない、とも語った。大量生産とは違うアプローチで店づくり、商品づくりをして、住み分けをしていかないといけないと、個人商店は生き残れないだろう、と。
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パンをデザインすることの可能性

今日は、3月の交流イベント「Meets+DESIGN」の参考にしてもらえればと思って、うちで新しい商品を開発するときの様子(写真)をいくつか持ってきました、「パンができる可能性」がわかりやすいもの選んだつもりです。


これは、旧生糸で開催した「café×KOBE」の様子です。僕の憧れの存在である荘司索シェフ(「コム・シノワ」のオーナー)とコラボさせていただき、有機栽培の米粉を使ったパンを作りました。正直に言うと、どうしても糠臭さが残るあまり美味しいとは思えない粉なんですが、神戸にどんな食材があるかを知っていただくことが大きなテーマでしたから、湯種製法などテクニックを組み合わせて、美味しさを引き出していきました。
昔はパン屋さんというと、アンパン、クリームパン、ジャムパン・・・etc.どこに行って同じような感じでしたが、今はだいぶ商品の表現方法が変わってきましたよね。それから、Facebookで発言することやブログに商品写真を出すこと、レストランとしてサービスすることも新しい表現方法のひとつでしょう
パンデュースの場合も、食材選びという切り口をもちろん真剣に考えるし、パン屋なのでちゃんと生地もつくり方も考えたりしています。でも普段は、プライスカードに簡単な商品説明を書く程度の表現しかできません。


そこで、パンにメッセージを書いたのが、この「ラブ&ピース」という商品です。愛というと恥ずかしいけれど、パン屋だって世界が平和になってほしいという気持ちを持っているし、地球の環境を良くしたいと思っているんです。このパンを囲って、家族で愛や平和を語り合って下さいというメッセージを表現してみました。


こちらのタコ、イカみたいなのはベーグル生地のパン。国産小麦を使い、冷蔵発酵させています。子ども用のタコの中身はソーセージで胡椒を振らず子ども用に。一方、イカにはチョリソーを入れて胡椒をきかせて、大人向けにしました。


次はキノコパンです。フィリングとしては香りが強過ぎる椎茸に、ベシャメル、パルメザンチーズ、スモークサーモンを練り合わせて、パンに合う風味にしました。


ハート形のパンは、オープン当初から何種類か作り続けていて、募金みたいな活動もしています。
ハートのパンやタコのパンがひとつ食卓にあるだけで、話題になったり、笑顔になったりとうのはパン屋さんにとっては幸せなことかなと思っています。デザイン的な感覚でパン屋さんでもこれくらいのことはできるんですよ。

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新商品は“受身”で作るという米山さん。アイデアに合わせて食材を仕入れるのではなく、届いた食材を生かすパンを考えるのが基本だ。開業から8年目ともなると、毎年同くらいの時期に届く野菜もあるが、同じアプローチで定番品にすることもあれば、切り口を変えて新作にするときもある。自転車に乗っている子どもの姿を見て、自転車に乗りながら食べられるスティック状のパンを思いついたり、週末のお父さんがビールのおつまみにというシチュエーションが浮かんで、アンチョビを入りのパンを作ったり。「大手メーカーのように、『今月の新製品を2種類考えねば』というような感覚は全くありません。現場にいて動いていると新しいものが結構生まれます」。
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今日を含めて6回のゼミで感じたこと、単純に「どういう食材を取って食べてもらいたい」というのもひとつでしょうし、「こんな食べ物を提供したい」というのもひとつでそうし、どういう発信でどういうことができるのかということを探っていただければと思います。技術的に無理なこともありますが、何でも言ってみるものはアリなので、「こんなことができないか」とか、「こんな素材でパンができないか」など、いろいろなことをグループごとに話していただき、最後にプレゼンしていただこうかなと思っています。

「パンデュース」ウェブサイト
http://www.painduce.com/

「パンデュース」ブログ
http://painduce.exblog.jp/